何かいいたげなニャンコ

2007-01-21 17:00:00

通勤途中で見かけるニャンコ。

そのコはほぼ毎日、僕がそばを通るとこちらを見あげては、何かを話したそうな表情を浮かべる。

 

最初にそのコを見かけたときに、僕は学生時代に付き合っていたある女のコを思い出した。だから、必然的にその名前を借りて「キミコ」と呼ぶようになったのだ。

はじめの頃はそれこそ僕の存在なんてまったく無視していた猫の「キミコ」だったんだけど、そのうち僕の熱い視線を意識するようになってか、やがて僕のそばへと近寄ってくるようになった。その自然な流れが、ますます人間の「キミコ」とのことを思い出させるハメになったのだった。

 

僕と人間の「キミコ」はお互いにもっとも多感な時期に、もっとも多くの喜びを共有し、そしてもっとも多くの「人間の嫌な部分」をぶつけ合って過ごした。交わした言葉は温かいものもあったし、辛らつで恐ろしいものもいくつかあったような気がする。お互いに言葉の意味を探りあい、その向こう側に存在する相手の実体を掴もうと必死になっていた。

そして、付き合い始めた時のように僕らは自然に離れていって、あれからもう10年。風の噂によると、とっくのとうに故郷に引っ込んで結婚したっていう。

それを耳にしたときに…「それでいいんじゃないか?」って、僕は自分に対して、言い訳めいた慰めの言葉をかけたのを覚えている。

 

猫の「キミコ」は一体何を僕に語ろうとしているのかわからないけど、少なくとも、人間の「キミコ」と交わしたあれだけ多くの言葉よりも意味のあるものとは思えない。でも…と、僕は思う。

「それでいいんじゃないか…」

僕は猫の「キミコ」の穏やかな表情を見つめながら、そうつぶやいた。


Category : 美人ニャンコ

愛人との密会

2007-01-04 17:00:00

妻と娘2人。上は小学校4年生で、下は幼稚園の年長さん。そんな女系家族の中で、私だけが男。最近、ますます生意気になってきた娘達と勝ち気な妻に囲まれて、ただでさえ肩身が狭いというのに、彼女達は完全なる犬派で、私だけが猫派なのである。

上の娘の誕生日は来月。プレゼントにと子犬をねだっている。当然、下の娘も一緒になって喜び、妻もまんざらではなさそう。私は、いかに犬を飼育することが困難であるかを、3人の前で大げさに語り、猫の可愛らしさをとうとうと語ったのだが、まったく効果は無かった。

で、当然のことながら、いとも簡単に私は折れた。そりゃそうだ。娘が学校で書いた作文…「可愛い子犬と遊ぶ夢」が情緒たっぷりの文章で書かれているのを読めば、父親ならば誰だってOKを出すに決まっている。
家族揃っての少し早めの夕飯の時の話題といえば、もちろん子犬の話で持ちきり。絵に描いたような家族団らん。しかし…顔では笑っていても、実は家族に話せない秘密を抱えている私の胸は痛むばかりであった。

そう…私には、愛人がいる…。
犬話がひとくぎりついたときに、私はタバコを買いにいってくるといって、ひとり外に出た。もちろん、そんなの嘘だ。こうして忍んで最愛の愛人の元に向かうのだ。
うちの裏に神社があり、その社務所の軒下で彼女は待っていた。
私はポケットに忍ばせていたおかずの残りを彼女の前に差し出しながら声を掛ける。でも、彼女は私の顔を見ずに、ティッシュに包まれたおかずの方に気をとられている。
その愛らしい表情に、思わず私は手を伸ばして、彼女の頭を優しくなでる。すると、ペロッと小さな舌を見せてそれに応えてくれるのだった。
ティッシュの包みを解いて、おかずを与える。一心不乱にそれを食べ続ける彼女を見つめていると、私はいつまでもここにいたいような気持ちになっていた。
「パパ!」
背後からの声に振りかえると、2人の娘が手を繋いで目の前に立っていた。
「猫ちゃん、可愛いね…パパは猫チャンが好きなんだよね…」
ちょっと寂しそうな表情を浮かべる娘達。それを見た私は、すかさず2人の頭をなでながら言った。
「動物はなんだって好きだよ」
ちょっぴり安堵の表情を浮かべる娘たちの手を握り、「さあ、帰ろう。ママが心配している」と歩き出す。
「ねえ、パパ。今度、一緒に猫チャンにえさあげたいよ」
「そうだね」
私は、娘たちの手をグッと握りしめながらとても温かなキモチになっていた。


Category : 美人ニャンコ

1

footer ads here Powered by ちびログ
footer ads here